ガーデン決算、増収減益のジレンマ

株式会社ガーデンが発表した2026年2月期第2四半期決算は、事業規模の拡大が必ずしも利益の増加に結びつかないという、飲食業界が直面する厳しい現実を浮き彫りにしました。

増収と減益のねじれ

2025年3月から8月までの中間決算で、売上高は前年同期比3.5%増の88億2,300万円に達しました。これは事業が成長軌道にあることを示しています。しかし、利益面では深刻な課題に直面しています。本業の儲けを示す営業利益は8億400万円と、前年同期比で22.8%もの大幅な減少を記録しました。同様に、経常利益は7億5,400万円(同23.7%減)、中間純利益は4億9,600万円(同21.2%減)と、軒並み2割を超える落ち込みとなりました。

この増収減益という「ねじれ」にもかかわらず、経営陣は前期と同額の年間配当90円(中間45円、期末45円)を維持する計画を発表しました。この決定は、現在の利益圧迫が一時的な外部要因によるものであり、長期的な成長戦略と収益力に対する自信の表れと解釈できます。

主要財務指標2026年2月期 第2四半期 (2025年3-8月)前年同期比
売上高88億2,300万円+3.5%
営業利益8億400万円-22.8%
経常利益7億5,400万円-23.7%
中間純利益4億9,600万円-21.2%

コスト高騰という逆風

大幅な減益の背景には、コントロール困難な外部環境の激変があります。利益を圧迫している主犯は、原材料価格、光熱費、そして人件費という「三重苦」です。これらのコスト増は個別の店舗努力だけでは吸収が難しく、企業の収益構造を直撃しています。

実際に、直近3ヶ月(6-8月期)の売上高営業利益率は、前年同期の11.7%から6.4%へと大幅に悪化しており、コスト圧力の深刻さが数字に表れています。この厳しい外部環境は、不採算事業を整理し、最も強みを持つ事業へ経営資源を集中させるという戦略的判断を必然的なものにしています。

攻めの店舗戦略

この逆風に対し、ガーデンは守りに入るのではなく、「選択と集中」という攻めの姿勢を明確にしています。今中間期において、新規出店は6店舗(直営5店舗、FC1店舗)、退店は4店舗(業務委託1店舗、FC3店舗)でした。その結果、店舗数は2店舗純増し、期末時点で197店舗(直営166店舗、業務委託1店舗、FC30店舗)となりました。

注目すべきは、会社が直接運営する収益性の高い直営店が5店舗増加した一方、FCや業務委託店は合計で3店舗減少している点です。これは、事業の質を高める戦略的な転換を示唆しています。この戦略を牽引するのが、二大主力ブランドである「壱角家」と「山下本気うどん」です。

  • 壱角家: 横浜家系ラーメンチェーンで、今中間期に新規出店した直営5店舗のうち4店舗を占める成長の主役です。濃厚でクリーミーな「濃まろ豚骨スープ」を特徴とし、すでに直営店100店舗、ブランド年商100億円という節目を達成しています。駅前一等地など交通量の多い立地への集中出店で、高い認知度を誇ります。
  • 山下本気うどん: 伝統的な讃岐うどんをベースに、洗練された「和・モダン」の空間で新たな体験価値を提供するブランドです。全店での「店内製麺」にこだわり、鯖節や昆布などを独自にブレンドした出汁で上品な味わいを追求しています。特に、SNSで話題の「白い明太チーズクリームうどん」は、若者層を惹きつけるキラーコンテンツとなっています 。今期は直営店とFC店を1店舗ずつ出店し、第二の成長ドライバーとして明確に位置づけられています。

V字回復への高い壁

ガーデンの拡大戦略を支える財務基盤を見ると、2025年8月末時点で総資産は前期末比14.0%増の180億8,300万円に拡大しました。これは主に長期借入金の増加によるもので、調達した資金は新規出店という将来への投資に振り向けられています。負債合計は同29.8%増の102億7,000万円となりましたが、これは将来の収益源を構築するための戦略的な「攻めの財務」と言えます。

同社は、期初に公表した通期の業績予想を据え置いています。その内容は、売上高182億9,000万円(前期比6.6%増)、営業利益20億5,000万円(同10.8%増)という、下期の劇的な回復を前提とした野心的なものです。上半期で営業利益が22.8%減少した状況からこの目標を達成するには、ある試算によれば、下半期(9月~2月)の経常利益を前年同期比で60.2%も増加させる必要があります。この極めて高いハードルを越えるには、新規出店効果の最大化やコストの安定化が不可欠です。

成長への賭け

株式会社ガーデンは、インフレという逆風の中、短期的な利益圧迫を許容し、二大ブランドへの集中投資で長期的な成長を確保するという、計算された賭けに出ています。この戦略の成否は、新規店舗を軌道に乗せ、コストを管理し、ブランド価値を維持できるかという現場の実行力にかかっています。投資家にとっては、今後の既存店売上高の推移と、経営陣の自信のバロメーターである年間90円の配当方針が、この大きな賭けの行方を見極める上で重要な指標となるでしょう。

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