「おかしのまちおか」上場!

菓子小売市場の新たな注目株「おかしのまちおか」の上場

菓子専門店「おかしのまちおか」を全国展開する株式会社みのやは、2025年7月18日に東京証券取引所スタンダード市場へ新規上場を果たしました 。この上場は、長年にわたり独自のビジネスモデルを磨き上げてきた同社にとって、新たな成長ステージへの重要な一歩となります。

上場初日、公開価格1,540円に対し、初値は2,531円と公開価格を64.4%上回る水準で取引が開始されました。その後一時2,976円(公開価格比93%高)まで上昇するなど、市場からの高い注目と期待を集めました。終値は2,523円と初値をわずかに下回ったものの、公開価格を大きく上回る水準を維持し、同社のビジネスモデルに対する投資家の信頼の表れとなりました。

新規株式公開(IPO)における初値の大幅な上昇は、単に資金調達が成功したという財務的な側面だけでなく、企業にとって多岐にわたる好影響をもたらします。市場から強い支持を得ることは、企業のブランド価値を飛躍的に高める効果があります。これにより、今後の事業提携において有利な条件を引き出したり、優秀な人材を確保する競争において優位に立つことが期待されます。特に、価格競争が激しい小売業界で独自の地位を確立してきた同社にとって、上場はさらなる飛躍の足がかりとなることは間違いありません。

上場は、企業の財務基盤を強化し、将来の成長に向けた投資のための財源を確保することを可能にします。これにより、持続的な成長への道筋が明確になります。同社は、コロナ禍を経て確立した効率的な店舗運営体制が、今後の多店舗展開における収益性の維持に貢献すると期待しています。また、株式会社みのやは、2015年1月に民事再生法の適用を申請した旧「美濃屋吉兵衛商店」とは異なる法人であり、過去の困難を乗り越えての上場達成は、現経営陣の立て直し手腕と、現在のビジネスモデルが持つ強靭性を示唆しています。一度大きな経営危機を経験した企業は、その後の経営においてリスク管理やコスト効率への意識を格段に高める傾向があります。みのやの場合、この経験が徹底したローコスト運営や現場主義といった独自のビジネスモデルを磨き上げる原動力となり、結果として上場を達成するまでの成長に繋がったと推察されます。これは、単なる「安売り」ではなく、経営のあらゆる側面で効率を追求する姿勢が、現在の高収益体質を支えていることを示しています。

以下に、株式会社みのやの上場概要をまとめました。

「みのや」上場概要

項目内容
銘柄コード386A
上場日2025年7月18日
公開価格1,540円
初値2,531円
初値騰落率64.4%
市場東証スタンダード

「おかしのまちおか」の強みと独自のビジネスモデル

「おかしのまちおか」の成功は、その独自のビジネスモデルに深く根差しています。これは、単なるディスカウントストアとは一線を画す、巧妙に設計された戦略の結晶と言えるでしょう。

卸問屋としてのルーツと圧倒的な仕入れ力

株式会社みのやは、1934年創業の菓子卸問屋としての長年の経験とノウハウを活かし、「おかしのまちおか」を運営しています。この歴史的背景は、同社のビジネスモデルにおける根本的な競争優位性として機能しています。多くの小売業が中間流通業者を介する中で、みのやは自ら卸機能を持ち、メーカーとの直接的な関係を築いています。これにより、中間マージンを排除し、市場の需給ギャップ、例えばメーカーが抱える過剰在庫や賞味期限の近い商品を現金で安く仕入れる「スポット仕入れ」を可能にしています。

このスポット仕入れは、通常ではありえないような特価品を提供できる同社の強力な武器となっており、売上の約3~4割を占める月もあるほど、低価格戦略の核をなしています。これは、単なる安売りではなく、市場の機動的な変化に対応した仕入れが収益に大きく貢献していることを示します。森永製菓、明治、ロッテ、江崎グリコ、不二家、亀田製菓など、主要な菓子メーカー70社以上との直接取引関係も、強力な仕入れ交渉力を支える基盤となっています。この垂直統合モデルは、単なる大量仕入れに留まらず、市場の機動的な変化に対応しながら、常に最安値で商品を調達できる体制を構築しており、他社が容易に追随できない強みとなっています。

徹底したローコスト運営と現場主義

「おかしのまちおか」のもう一つの強みは、徹底したローコスト運営と、各店舗に大きな裁量を与える「現場主義」にあります。

「箱まま陳列」に象徴されるシンプルな店舗づくりは、同社のコスト意識を象徴する光景です。商品の段ボール箱をそのまま陳列棚として活用することで、高価な什器への投資を抑え、商品を迅速に店内に並べることが可能になります。これは、店舗運営のあらゆる場面でコストを切り詰める工夫が凝らされていることを示しています。

効率的な店舗立地戦略も、コスト抑制に貢献しています。駅前や商店街、ショッピングセンター内など人通りの多いエリアにありながら、比較的小規模な店舗で展開することで、家賃などの固定費を抑制しています。特に注目すべきは、スーパーマーケット(「まいばすけっと」など)の近くに出店する「被せ出店戦略」です。これは、顧客層が重複しつつ直接競合しない業態の集客力を活用する巧妙な手法であり、日高屋がマクドナルドの近くに出店する戦略と同様の考え方に基づいています。

さらに、常温商品中心の品揃えも、運営コストを低く抑える要因です。冷蔵・冷凍設備が必要な商品を極力絞ることで、設備投資や電気代などのランニングコストを大幅に削減しています。

そして、同社の「現場主義」は、単なる店舗運営の自由度ではなく、小売業における「スピード感」と「顧客対応力」を最大化する戦略です。各店舗の店長に、地域客層、天候、近隣イベントなどを考慮した仕入れ、価格設定、特売品決定の裁量権が大幅に与えられています。これにより、地域に密着した魅力的な売り場を実現し、売れ残りのリスクを自店で負う覚悟があるからこそ、大胆な価格設定も可能にしています。正木社長も「常にスピード感というものを現場力で上げていかないと、そのお客さまの消費につながらない」と語っており、現場の機動性が顧客満足度と直結するという考えが徹底されています。現代の小売市場は変化が激しく、消費者の嗜好も多様化しています。中央集権的な管理では、市場の微細な変化を捉え、迅速に対応することが困難です。しかし、「個店主義」により、各店舗の店長が地域の特性やその日の状況(例:暑い日にはサイダーを増やすなど)に応じて柔軟に品揃えや価格を調整できるため、顧客ニーズへの即応性が格段に向上します。これにより、機会損失を減らし、顧客体験を最適化することで、来店頻度や購買単価の向上に貢献しているのです。

効率的な物流システムとサプライチェーン

「おかしのまちおか」の低価格と豊富な品揃えを支えるのは、自社で構築した効率的な物流システムです。同社は自社で物流センターを運営し、店舗への商品供給を効率化することで、物流コストの削減と迅速な商品補充を実現しています。

卸・小売の垂直統合モデルは、仕入れから販売までを一気通貫で行うことを可能にし、中間コストの削減とメーカーからの直接的な情報収集を可能にしています。これにより、市場の変化に迅速に対応し、常に最適な商品を供給できる体制を構築しています。

さらに、関東圏を中心に店舗を密集させる「ドミナント戦略」も、物流効率を高める上で効果を発揮しています。特定の地域に集中的に出店することで、地域内でのブランド認知度を高めると同時に、物流ルートを最適化し、配送コストを抑制しています。この戦略は、ブランド認知度向上と物流コストの最適化を同時に実現する、極めて合理的なアプローチと言えます。

上場後の成長戦略と今後の展開

上場を機に、株式会社みのやはさらなる成長戦略を推進していく方針です。既存の強みを活かしつつ、市場の変化に対応した新たな取り組みが期待されます。

積極的な新規出店計画

同社は、2025年6月期末時点で合計208店舗(関東圏161店舗、中京圏24店舗、関西圏23店舗)を展開しており、今期は新たに17店舗(関東圏11店舗、中京圏5店舗、関西圏1店舗)の新規出店を計画通り進めています。この新規出店計画は、単なる店舗数拡大に留まらず、既存の「ドミナント戦略」と「被せ出店戦略」をさらに深化させるものです。これにより、特定の地域における市場支配力を高め、競合に対する優位性を確立しながら、効率的な成長を目指す姿勢が伺えます。

出店戦略は、企業の成長を左右する重要な要素です。みのやは、単に店舗数を増やすだけでなく、既存の強みである物流効率とブランド認知度を最大化する「ドミナント戦略」を継続しています。さらに、競合他社を「仲間」と捉え、その集客力を活用する「被せ出店」は、新たな顧客層を取り込みつつ、出店リスクを抑える賢明な戦略と言えるでしょう。

「おかしのまちおか」店舗展開状況(2025年6月期末計画)

地域既存店舗数(2025年6月期末計画)新規出店計画(今期)
関東圏161店舗 11店舗
中京圏24店舗 5店舗
関西圏23店舗 1店舗
合計208店舗 17店舗

商品開発力の強化と付加価値提供

同社はプライベートブランド(PB)商品の開発にも取り組んでおり、今後その拡充が期待されます。PB商品の強化は、同社の収益性向上とブランド力強化の二重のメリットをもたらします。メーカー品に依存せず、自社で開発したユニークな商品を展開することで、価格競争に巻き込まれにくい独自の価値を創出し、顧客のロイヤルティを高めることが可能になります。

「駄菓子×量り売り」など、顧客に「宝探し」のような楽しさを提供する店舗体験は、ネット通販や大規模スーパーでは実現しにくい同社の強みです。この体験価値は、特に子供連れの顧客や外国人観光客に人気があり、口コミやリピート来店に繋がっています。小売業においてPB商品は、粗利率の改善に直結するだけでなく、他社との差別化を図る上で非常に有効な手段です。みのやの場合、既存の強力な仕入れネットワークと「個店主義」による現場のニーズ把握能力を活かせば、消費者の嗜好に合わせた魅力的なPB商品を開発し、さらに「宝探し」の要素を強化できるでしょう。

デジタル化への対応と販促チャネルの多様化

今後の戦略として、EC(電子商取引)やアプリ、キャッシュレス決済の導入促進が挙げられています。現状、公式ウェブサイトやSNS(X、Instagram)を通じた情報発信は行われているものの、本格的なECサイトの展開は確認されていません。販促チャネルの多様化として、SNSやYouTube、オウンドメディアの活用も視野に入っています。

EC展開は、同社にとって大きな成長機会であると同時に、慎重な検討を要する課題でもあります。菓子類のオンライン販売には、破損リスク、品質保持、物流コスト、そして食品衛生法に基づく許可など、特有の課題が存在します。同社が培ってきた「低コスト運営」と「現場での体験価値」をオンラインでどう再現し、効率的な物流網を構築するかが鍵となります。「おかしのまちおか」のビジネスモデルは、店舗での「宝探し」体験と低コスト運営に特化しています。EC化は新たな顧客層の獲得に繋がりますが、店舗での体験をオンラインで再現することは難しく、また、冷蔵・冷凍設備が不要な常温商品中心の品揃えという強みが、オンライン物流では逆に制約となる可能性もあります(破損しやすい商品や賞味期限の短い商品への対応)。EC導入は、既存の強みを損なわずに新たな収益源を確保するための、バランスの取れた戦略が求められます。

人材戦略の見直しとオペレーションのさらなる効率化

人手不足が深刻化する小売業界において、同社はスタッフ業務効率化、店内業務省力化、少人数運営を推進しています。2025年5月末時点の従業員数は178名ですが、パートナー社員を含む総従業員数は2,271名(2024年6月末時点)とされており、パート・アルバイトスタッフを主体とした柔軟な人員配置がなされていることが伺えます。

特に注目すべきは、コロナ禍以降に業務のマニュアル化を進め、1人の社員が2~3店舗を管轄し、アルバイトスタッフだけでも運営を回すオペレーションを実現したことで、人件費を圧縮できたという点です。徹底した人件費抑制策は、同社の高収益性を支える重要な要素であり、労働集約型ビジネスである小売業において、人件費高騰という業界全体の課題に対する有効な解決策となり、今後の多店舗展開における収益性維持に不可欠です。多能工スタッフの育成や省力化技術の導入も今後の人材戦略のポイントとして挙げられています。小売業界は慢性的な人手不足と人件費高騰に直面しており、これが収益を圧迫する大きな要因となっています。みのやがコロナ禍で確立した「少人数・多店舗管理」のオペレーションは、この課題に対する実践的な解であり、今後もこの効率性を維持・向上させることが、持続的な成長と高収益体質の維持に直結します。

菓子小売市場の動向と「おかしのまちおか」の競争優位性

国内菓子市場の現状とトレンド

2024年の菓子市場は4兆円に達し、輸出・インバウンド需要が過去最高を更新するなど、全体としては成長基調にあります。一方で、国内市場は少子化と人口減少の影響で頭打ち状態にあり、直近の2022年以降はコスト高騰による値上げがメーカー売上を押し上げている状況です。

このような市場環境において、特に注目すべきトレンドは「健康志向スナック市場」の急速な成長です。消費者の健康意識の高まりにより、世界のヘルシースナック市場は2022年に906.2億米ドル規模に達し、今後も高い成長率が見込まれています。糖質や脂肪を抑えつつ、タンパク質や食物繊維を補う機能性食品、植物性たんぱくスナック、野菜スナックなどが特に人気を集めています。国内菓子市場が人口減少で飽和状態にある中で、みのやが成長を続けるためには、市場シェアの拡大に加え、新たなトレンドへの対応が不可欠です。「健康志向スナック」市場は大きな成長機会であり、同社の「宝探し」体験と組み合わせることで、新たな顧客層を開拓できる可能性があります。既存の市場が縮小傾向にある場合、成長は競合からのシェア奪取か、新たな市場セグメントの開拓によってのみ可能です。健康志向スナックは、従来の「おかしのまちおか」のイメージとは異なるかもしれませんが、その仕入れ力と店舗運営の柔軟性を活かせば、健康志向のニーズに応える商品を効率的に提供し、新たな顧客層(例:健康を意識する若年層や高齢者)を取り込むことができるでしょう。

競合他社との差別化要因

「おかしのまちおか」は、ディスカウントストアやスーパー、ドラッグストアといった他の小売業態を直接の競合とは見なさず、「切磋琢磨する仲間」という意識を持っています。この視点は、同社の市場戦略の成熟度を示しています。これは、価格競争に陥らず、自社の強みを最大限に活かせるニッチ市場を確立している証拠です。

同社の明確な差別化要因は、主に以下の点に集約されます。第一に、幅広い種類の菓子製品を「宝探し」のように楽しめる店舗体験です。これは、オンライン販売や大規模スーパーでは提供しにくい、物理店舗ならではの価値であり、顧客の来店動機を強く刺激します。第二に、卸問屋としての長年の強みを活かした「圧倒的低価格」と「スポット仕入れ」によるユニークな品揃えです。これにより、常に新鮮で魅力的な商品を低価格で提供し続けることが可能になっています。スーパーやドラッグストアが提供できない「専門性」と「体験」を追求することで、独自の顧客層を囲い込み、持続的な成長を実現しています。多くの企業が激しい競合環境下で消耗戦を強いられる中、みのやは自社の立ち位置を明確にし、共存共栄の戦略をとっています。これは、自社の強み(専門性、体験価値、低コスト)を深く理解し、それらを最大限に活かせる市場セグメントに焦点を当てることで、不必要な競争を避け、効率的な成長を追求していることを示しています。

財務状況と投資家への注目点

株式会社みのやの財務状況は、その独自のビジネスモデルがもたらす高い収益性を反映しています。

直近の業績と財務目標

2024年6月期の実績では、売上高225億4,000万円、営業利益9億6,766万円を計上し、営業利益率は4.2%と、他小売店と比較して高い水準を維持していました。前期(2023年6月期)の営業利益率3.2%から改善傾向にあり、堅調な推移を示していました。

しかし、2025年6月期の業績予想では、売上高241億円(前期比6.9%増)を見込む一方で、物流コスト増や人件費上昇、店舗退去時の費用見積りの見直しなど一過性の費用により、営業利益6億9,200万円(同28.4%減)、純利益4億3,200万円(同39.5%減)と減益を見込んでいます。この2025年6月期の減益予想は、一見するとネガティブな要素ですが、その原因が一過性のコスト(物流センター関連費用や店舗退去費用)にあると明示されている点に注目すべきです。これは、同社のビジネスモデルの根本的な収益性が損なわれたわけではなく、むしろ将来の成長に向けた投資や効率化に伴う一時的な費用である可能性が高いことを示唆しています。投資家は、この一時的な影響を除いた「調整後」の収益性や、2026年6月期以降の回復見込みに注目する必要があるでしょう。企業の財務分析では、一時的な要因と構造的な要因を区別することが重要です。みのやの場合、減益の理由が明確に説明されており、特に物流センター関連費用は、将来的な物流効率化とコスト削減に繋がる投資と解釈できます。また、店舗退去費用も、不採算店舗の整理など、ポートフォリオの最適化に向けた動きと捉えることができます。これらのコストを乗り越えた後の、より強固な収益基盤と成長軌道への回帰が期待されます。

長期的な配当性向は20%程度を目標としつつ、2025年6月期は年間配当金10円、配当性向6.9%を予定しています。これは、成長投資と株主還元のバランスを重視する姿勢を示唆しています。成長企業にとって、利益を再投資して事業を拡大することは重要ですが、同時に株主への還元も考慮する必要があります。みのやは、安定配当を基本方針としつつ、長期的な配当性向目標も掲げています。これは、成長投資と株主還元のバランスを重視する姿勢を示しており、長期的な視点を持つ投資家にとって魅力的なポイントとなります。

今後の収益性見通しと課題

2026年6月期は物流センターの一過性費用がなくなれば、純利益6.2億円、発行済み株式数350万株でEPS180円程度と仮定されており、PER12倍程度であれば小売株として良い水準と見られています。

同社は「まだ上場企業の1年生」として、市場との対話を重視し、継続的に経営することで企業価値向上を目指す姿勢を示しています。上場後も高収益体質を維持しつつ、積極的な成長投資をバランス良く行うことが、同社の企業価値向上には不可欠です。特に、人件費や物流コストの高騰は小売業界全体の課題であり、同社がこれまで培ってきた効率化のノウハウをさらに進化させることが求められます。

以下に、株式会社みのやの主要財務指標の推移を示します。

「みのや」主要財務指標推移

項目2024年6月期(実績) 2025年6月期(予想)
売上高225億4,000万円241億円(+6.9%)
営業利益9億6,766万円6億9,200万円(-28.4%)
経常利益10億4,569万円7億7,500万円(-25.8%)
純利益7億1,424万円4億3,200万円(-39.5%)
EPS130.45円144.13円
PER6.47倍 10.68倍
PBR1.85倍 1.58倍
配当金(年間)10円 10円
配当性向6.9% 6.9%

まとめ:持続的成長に向けた展望

「おかしのまちおか」を運営する株式会社みのやの上場は、同社が長年にわたり培ってきた独自のビジネスモデルが市場から高く評価された結果と言えます。卸問屋としての強みを活かした圧倒的な仕入れ力、徹底したローコスト運営、そして現場に裁量を与える「個店主義」は、価格競争が激しい菓子小売市場において、他社にはない明確な競争優位性を確立しています。これにより、顧客に「宝探し」のような楽しさを提供しつつ、高い収益性を確保する仕組みが構築されています。

上場後の同社は、積極的な新規出店、プライベートブランド商品の強化、そしてデジタル化への対応を成長戦略の柱として掲げています。特に、国内菓子市場が少子化や人口減少により飽和状態にある中で、健康志向スナック市場のような新たなトレンドへの対応は、今後の成長を左右する重要な要素となるでしょう。また、コロナ禍で確立した少人数での店舗運営体制や、社員が複数店舗を管轄する効率的な人件費抑制策は、小売業界全体が直面する人手不足とコスト高騰という課題に対する有効な解決策であり、今後の多店舗展開における収益性維持に不可欠です。

2025年6月期の減益予想は、物流センター関連費用や店舗退去費用といった一過性の要因によるものであり、同社のビジネスモデルの根本的な収益性が損なわれたわけではないと評価できます。むしろ、これらは将来の成長に向けた投資や効率化に伴う一時的な費用と捉えることができ、2026年6月期以降の収益回復が期待されます。

株式会社みのやは、「まだ上場企業の1年生」として、市場との対話を重視し、継続的に経営することで企業価値向上を目指す姿勢を示しています。卸・小売の垂直統合モデルと現場主義を基盤とした独自のビジネスモデルをさらに進化させ、市場のニーズに柔軟に対応していくことで、「おかしのまちおか」は菓子小売市場における独自の存在感を一層高め、持続的な成長を実現していくことでしょう。