ローソン、「災害支援コンビニ」で地域防災を強化

ローソンが「災害支援コンビニ」の設置を開始した。第1号店は千葉県富津市の「ローソン富津湊店」で、2025年度内に運用を開始する。2030年度までに全国100店舗への拡大を目指すという。背景には、南海トラフ巨大地震などの災害リスクが高まる中、コンビニを地域インフラとして再定義する動きがある。

災害時の支援拠点としての機能

災害支援コンビニは、平時は通常営業を行い、災害時には地域住民の支援拠点となる。店舗には太陽光発電設備、業務用蓄電池、電動車(PHEV/PHV・EV)からの給電機能を備える。これにより、停電時でもレジ、照明、冷蔵設備などの基本機能を維持できる。

また、スマートフォン充電用バッテリー、災害情報を発信するデジタルサイネージ、断水時に使用可能な災害用トイレも導入される。店内厨房では、水と米があれば作れる「災害時用おにぎり」の提供も可能だ。

行政発表と災害リスクの現状

政府の地震調査委員会によると、今後30年以内に南海トラフ巨大地震が発生する確率は「60%~90%程度以上」とされている。また、気象庁の統計では、直近10年間の短時間強雨の発生回数は、1976年~1985年の10年間と比べて約1.5倍に増加している。

こうした状況を踏まえ、ローソンは「人命を第一に、マチのインフラとして営業を続けていく」とし、災害時でも機能する店舗づくりを進めている。

電動車100台導入で非常用電源確保

災害支援コンビニの展開に合わせ、ローソンは2030年度までに社用車100台を電動車に入れ替える。これにより、地震以外の有事にも店舗運営を支える非常用電源として活用する。電動車は、ガソリンエンジンと電気モーターを併用するPHEV/PHV型と、電気のみで走行するEV型が対象となる。

加盟店の負担なしで展開可能

災害支援コンビニへの転換に際して、加盟店の追加負担は発生しない。既存契約の範囲内で要件を満たす店舗に対し、ローソンが順次提案し、了承を得た店舗からリニューアルを進める。これにより、導入のハードルを下げ、全国展開を加速させる狙いがある。

ドローン活用も視野に

KDDIとの連携により、ドローンを活用した被災状況の確認や物資配送の実証も進められている。通信インフラと物流の融合により、災害時の対応力をさらに高める構想だ。

コンビニの役割が変わる

ローソンの災害支援コンビニは、単なる買い物拠点から、地域の安全を支えるインフラへと進化している。災害時における情報発信、電力供給、食料提供など、具体的な機能を備えた店舗は、今後の防災・減災のモデルケースとなるだろう。企業の社会的責任と地域密着型の経営が融合したこの取り組みは、他の小売業にも波及する可能性が高い。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA