
堅調な業績で競合他社を大きく引き離す
株式会社丸千代山岡家(東証グロース:3399)が発表した2026年1月期第1四半期決算は、売上高から各利益まで軒並み過去最高を記録する好調な結果となった。同社の売上高は96億8,521万円(前年同期比27.0%増)、営業利益は10億6,017万円(同39.8%増)、純利益は7億2,867万円(同39.0%増)と、いずれも大幅な増収増益を達成した。
この好業績の背景には、同社が37ヶ月連続で既存店売上高が前年を上回るという安定した成長基盤がある。特に注目すべきは、営業利益率が約11%という高水準を維持していることで、これはラーメン業界では異例の収益性の高さを示している。

ラーメン業界の厳しい現実と山岡家の差別化戦略
ラーメン業界全体を見渡すと、2024年は非常に厳しい1年だった。帝国データバンクの調査によると、2024年のラーメン店倒産件数は72件と過去最多を記録し、前年の53件から35%も急増している。市場規模こそ4,385億円(2023年、富士経済調べ)と堅調に推移しているものの、約1.62万店という激戦区での競争は年々激化している。
このような環境下で山岡家が好調を維持できている理由は、同社独自の「24時間営業×直営店×ロードサイド立地」という差別化戦略にある。競合他社の多くがフランチャイズ展開を主体とする中、山岡家は全店直営にこだわり、品質の統一と収益性の確保を両立させている。

競合他社との業績比較で見えるポジショニング
主要ラーメンチェーンとの比較では、山岡家の独自性が際立っている:
店舗数ランキング(2024年調査)
- 餃子の王将:734店舗
- リンガーハット:586店舗
- 日高屋:403店舗
- 幸楽苑:404店舗
- 山岡家:190店舗
店舗数では他社に劣るものの、山岡家の1店舗当たりの売上高は約5億円と業界トップクラスの効率性を誇る。これは24時間営業により稼働時間を最大化し、深夜帯の需要を確実に取り込んでいることが大きく寄与している。
丸源ラーメンやらあめん花月嵐などの競合が家族客をターゲットとする中、山岡家はトラックドライバーや深夜労働者など、他社がカバーしきれない顧客層を着実に獲得している。
「300店舗・47都道府県展開」への道筋
同社は2028年1月期を目標とする中期経営計画で「300店舗・47都道府県展開」を掲げている。現在190店舗、31都道府県での展開から約10年で1.6倍の規模拡大を目指す野心的な計画だ。
今後の成長戦略の柱:
- 地域展開の加速:関西以西や既存店好調エリアを中心とした年間10店舗の新規出店
- 人材投資の強化:給与水準引き上げ、確定拠出年金の拡充による労働環境改善
- QSC向上:品質・サービス・清潔さの向上を目的とした社内コンテストやマイスター制度
- デジタル化推進:公式アプリでのクーポン配信、来店ポイント施策
特に人材確保については、労働集約型の飲食業界において最も重要な課題となっており、同社の積極的な投資姿勢は今後の成長を支える重要な基盤となるだろう。

業界トレンドと山岡家の優位性
2025年のラーメン業界では、ユニークなトッピングや発酵食品の活用、新たなフードトレンドの取り入れが注目されている。しかし山岡家は奇をてらった戦略よりも、基本に忠実な「店内調理」「24時間営業」「直営店運営」という3本柱を貫いている。
この堅実なアプローチが功を奏し、食材費上昇という業界共通の課題に対しても、2024年4月の価格改定により原価率を29.6%に抑制することに成功している。競合他社が倒産リスクに直面する中、山岡家の財務安定性は際立っている。
今後の展望と投資価値
山岡家の成長ストーリーは明確だ。少子高齢化により労働人口が減少する中、24時間営業を支える人材確保が最大の課題となるが、同社の積極的な労働環境改善と教育投資により、この課題をクリアできる可能性は高い。
また、ロードサイド立地と24時間営業という組み合わせは、物流業界の成長や働き方の多様化というマクロトレンドにも合致している。300店舗達成時の売上高は400億円規模が見込まれ、現在の時価総額約200億円を考慮すると、中長期的な投資価値は十分に期待できるだろう。
