2026年1月27日 – シアトル発
Eコマースの巨人Amazonは火曜日、同社が運営するレジなしコンビニエンスストア「Amazon Go」およびスーパーマーケット「Amazon Fresh」の実店舗を、すべて閉鎖すると発表した。2018年の一般公開から世界中の小売業界に衝撃を与えた「レジに並ばない」店舗体験への挑戦は、収益化のモデルを確立できぬまま、自社店舗としての幕を閉じることになる。
革新性だけでは超えられなかった「収益の壁」
複数の米国報道(GeekWire, Grocery Dive, C-Store Dive)によると、今回の閉鎖対象は全米に残る「Amazon Go」約14店舗と「Amazon Fresh」58店舗の計72店舗に及ぶ。多くの店舗は2026年2月1日までに営業を終了する予定だが、カリフォルニア州など一部の店舗は労働法規制への対応のため、その後45日間営業を継続する。
Amazonは公式声明の中で、「Amazonブランドの実店舗食料品店において、大規模な拡大に必要な『経済的モデル』を伴う、真に差別化された顧客体験を構築することができなかった」と認めている。
「Just Walk Out」技術は、カメラとセンサーフュージョンを駆使し、顧客が商品を手に取って店を出るだけで決済が完了する魔法のような体験を提供した。しかし、この高度な技術を維持するための設備投資と運用コストは莫大であり、薄利多売が基本の食品小売業において、採算ラインに乗せることは困難を極めたと見られる。
Whole Foodsへの回帰と集中
Amazonは実店舗小売から完全に撤退するわけではない。今回の決定は「選択と集中」の結果である。
同社は今後、2017年に買収した高級スーパー「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」に資源を集中させる方針を明らかにした。報道によれば、Amazonは今後数年間でWhole Foodsを100店舗以上新規出店する計画であり、閉鎖されるFreshやGoの一部店舗もWhole Foodsブランドへ転換される可能性がある。
また、都市部向けの小型フォーマットである「Whole Foods Market Daily Shop」の展開も加速させる。これは、Amazon Goが狙っていた「都市部の利便性」というニーズを、より確立されたブランド力と、より現実的な運営コストで満たすための戦略的ピボットと言える。
「Just Walk Out」技術の行方
Amazon Goという「ショールーム」は消滅するが、その中核技術であった「Just Walk Out」システム自体が消えるわけではない。
Amazonはすでに2024年時点で、大型店であるAmazon Freshからこの技術を撤去し、スマートカート「Dash Cart」への移行を進めていた。一方で、空港、スタジアム、大学キャンパス、病院などの「急いで買い物を済ませたい」閉鎖的商圏を持つサードパーティ企業への技術外販は好調である。現在、世界5カ国・360箇所以上の他社店舗でこの技術が稼働しており、Amazonは今後、技術プロバイダーとしての立ち位置をより明確にすることになるだろう。
小売業界への示唆
「未来の店舗」の象徴であったAmazon Goの撤退は、小売業界に重要な教訓を残した。それは、どれほど優れたテクノロジーであっても、それ単体では小売業の基本である「収益性」と「スケーラビリティ」の問題を解決できないということだ。
消費者は確かに利便性を求めているが、Amazonは自社ブランドの店舗において、Whole Foodsのような強力なブランド・ロイヤリティや、来店動機となる独自の「商品力」を構築するのに苦戦した。結果として、テック企業としての強み(オンライン、物流、AWS)と、買収した小売資産(Whole Foods)を融合させるハイブリッド戦略こそが、Amazonにとっての最適解であるという結論に達したようだ。
空き店舗となる一等地が今後どのように流動するのか、そしてWhole Foodsの拡大戦略が競合他社(KrogerやWalmart)にどのような影響を与えるのかを注視したい。




