UNITED ARROWS、グローバルオンラインストアを9月に開設へ — 海外展開と日本ブランドの国際化

日本のセレクトショップ大手、UNITED ARROWS(ユナイテッドアローズ)が、2025年9月に初めて公式のグローバルオンラインストアを開設することが明らかになりました。これまで同社のコレクションを海外で購入するには、日本のオンラインサイトを介して配送代行や個人輸入などを利用するケースが多かったため、この動きは大きな転換点といえます。

以下、この動きの背景、意義、そして今後の影響について整理します。


背景:国内市場の成熟と海外需要の高まり

UNITED ARROWSは1989年創業のブランドで、国内では「ユナイテッドアローズ」「Drawer」「BLAMINK」「Beauty & Youth」など複数のブランドを傘下に持ち、ファッションセレクションとライフスタイル提案で高い評価を得ています。

一方で、日本国内のファッション小売市場は人口減少、高齢化、購買行動の変化などを背景に、成長余地に限界が見え始めています。また、為替の影響もあって、国外からの日本ブランドに対する興味が高まっており、海外の消費者が直接購入可能なチャネルを求める声が強まってきました。

こうした中で、UNITED ARROWSのグローバルオンラインストア開設は、ブランドの海外需要を直接取り込む手段として適切なタイミングでの対応と評価できます。


ローカライズと体験価値の強化

UNITED ARROWSは新ストアにおいて、「ローカライズされた、シームレスなショッピング体験」を提供することを目指しています。具体的には、複数の国・地域からの注文に応じた言語対応、通貨表示、配送・関税・返品ポリシーなどの整備が含まれる見込みです。

このようなローカライズ戦略は、日本ブランドが海外でファンを獲得する上で非常に重要です。海外消費者にとって、ブランドそのものの魅力はもちろんですが、購入プロセスでのストレス(言語、送料、税、関税など)が小さいことが購買意欲を左右します。UNITED ARROWSがこれらを丁寧に整備することで、ブランドロイヤルティやリピート率の向上が期待できます。

また、セレクトショップという業態は、商品の“キュレーション”(選び抜かれた商品)、「店舗でしか味わえない雰囲気/体験」という点が強みです。オンラインストアの拡充においても、単なる商品の配送・販売だけでなく、ブランドのストーリーや世界観をどう伝えるかが問われます。これまでUNITED ARROWSが築いてきたブランド性が、オンラインでも一貫して表現できるかが注目されます。



今後の課題とリスク

もちろん、この動きにはいくつかのチャレンジも伴います。

  1. 物流・関税・配送コスト 国際配送における送料や関税のしくみを明確にし、顧客にとって納得感のある価格設定を行わなければなりません。これが不十分だと、結局中間業者や転送業者を使った購入の方が安くなるケースもありえます。
  2. 在庫管理と供給体制 グローバル販売を行うには、適切な在庫を常に確保し、オンライン注文に応じて速やかに発送できる体制が必要です。特にセレクトショップでは限定品やコラボ商品の比率が高く、需要予測が難しいため、在庫過剰・不足のリスク管理が求められます。
  3. ブランド体験の維持 実店舗での接客、空間演出などがブランド体験を支えてきた部分を、オンラインにもどう拡張・再現するかが重要です。例えば、商品写真・動画・ライブ配信などでオンライン接客を強化する、あるいはポップアップイベントを海外で展開するなど、体験型の要素を組み込むことがカギです。
  4. 競争環境 海外には「外敵」が多く存在します。ファストファッション、グローバルブランド、日本ファッションに強いeコマースプラットフォーム、またC2Cマーケットプレースなど。これらと差別化するためには、商品の独自性、品質、デザイン、きめ細かい顧客サービスなど、UNITED ARROWSらしさを明確に打ち出すことが必要です。

インパクトと展望

UNITED ARROWSがこの戦略を成功させれば、日本の中堅~高級セレクトブランド全般にとってお手本となる可能性があります。特に「海外ファンをブランドの仲間として取り込む」モデルが進めば、収益構造の多様化、為替変動のヘッジ、ブランド価値の国際的認知度向上などのメリットが期待できます。

また、日本のファッション業界全体にも影響があります。生産側(縫製、素材)、物流インフラ、決済・税務・法律の整備等において、国際販売を前提とした仕組みの整備への圧力が高まるでしょう。地方の工房や小規模ブランドもこの波に乗る余地がありますし、共同で物流センターを利用するなどの協業モデルが成長する可能性があります。

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