インフレどうなる?高市総裁効果で、また10月6日、1ドル150円越えの円安!

新リーダー誕生と市場の熱狂

2025年10月4日、自民党総裁選で高市早苗氏が勝利すると、週明け6日の金融市場は劇的に反応しました 。日経平均株価は一時2000円以上も急騰して4万8000円台に乗せ、史上最高値を更新。この「高市トレード」と呼ばれる熱狂の裏で、外国為替市場では円が急落し、1ドル150円の節目が目前に迫りました。

この円安の背景には、高市新総裁が掲げる「積極財政」と「金融緩和」の継続という経済政策への期待があります。金融緩和が続くということは、日本の金利が低いままであることを意味します。より高い金利を求める世界の投資家は、金利の低い円を売ってドルなどを買う動きを強めます。多くの人が円を売れば、円の価値は下がる、これが円安の仕組みです。

高市氏の勝利により、それまで市場の一部で囁かれていた早期利上げの観測は急速に後退し、円売りの動きが一気に加速しました 4。

しかし、この円安は輸出企業には追い風ですが、エネルギーや食料品など輸入品の価格を押し上げ、国民生活を圧迫するインフレを悪化させる「両刃の剣」でもあります。新政権は今後、市場の期待と国民生活の安定という、難しい課題の舵取りを迫られます。

見せかけの数字に隠されたインフレの実態

私たちの生活に直結する物価の動きを示す「消費者物価指数(CPI)」は、総務省が毎月発表する「物価の体温計」です。

2025年9月の東京都区部のコアCPI(生鮮食品を除く)は、前年同月比で2.5%の上昇と発表されました。この数字は前月と同じで、インフレが落ち着いたかのように見えます。

しかし、これにはカラクリがあります。東京都が9月から始めた「0~2歳の第1子保育料の無償化」という政策が、指数を0.32パーセントポイントも人為的に押し下げていたのです。もしこの影響がなければ、コアCPIは+2.8%となり、前月の+2.5%から伸びが「加速」していたと分析されています。見かけの数字とは裏腹に、物価上昇の圧力は強まっているのが実態です。

特に深刻なのが食料品とエネルギーです。食料品(生鮮食品を除く)は依然として高い伸びを示し、主食である「うるち米」は+46.9%、「チョコレート」は+53.8%、「鶏肉」は+14.1%と、食卓に欠かせない品目が軒並み高騰しています。エネルギー価格も、政府の補助金終了の影響で+2.7%の上昇に転じ、家計への負担が再び増しています。

スーパーマーケットの「インフレの罠」

円安と物価高は、身近なスーパーマーケットを「インフレの罠」に追い込んでいます。円安で輸入原材料や燃料費が上昇し、仕入れコストが増加。しかし、値上げをすれば節約志向の顧客が離れ、価格を据え置けば利益が圧迫され経営が立ち行かなくなるというジレンマです。

この状況は、私たち消費者の行動も変えました。長引く物価高で「家計防衛意識」が強まり、衝動買いは減少。「計画購買」が主流となり、消費者は価格と価値を厳しく見極める「賢い消費者」へと変化しています。この変化に対応できない小売業者は淘汰される時代に入りました。

生き残りの鍵「プライベートブランド」

この苦境を乗り越える切り札として、小売各社が総力を挙げるのが「プライベートブランド(PB)」です。自社で企画・開発することで中間コストを削減し、「高品質・低価格」を実現。賢くなった消費者のニーズを掴んでいます。

小売最大手のイオンは、PB「トップバリュ」の2025年度売上目標を前期比11%増の1兆2000億円に設定。さらに10月1日からは、トップバリュ60品目を「値下げ」するという大胆な戦略を打ち出しました。これは、AIによる高精度な需要予測などを活用し、生産から流通までの無駄を徹底的に省く「コツコツコスパ」という企業努力によって実現されています。

ライバルのセブン&アイ・ホールディングスも、年間売上高1兆5000億円を突破したPB「セブンプレミアム」で攻勢をかけます。2025年度には全品目の約半数にあたる1800品目を刷新し、低価格帯の「セブン・ザ・プライス」の品目数を3割拡大する計画です。

小売業界の競争の主戦場は、PBへと完全に移行しました。この競争は、AIなどの最新技術を駆使した、水面下での熾烈な技術開発競争によって支えられているのです。

高市新総裁の誕生が引き起こした「高市トレード」は、円安と株高という形で市場に歓迎されました。しかし、それは輸入物価の上昇を通じて、私たちの生活を直撃するインフレをさらに悪化させる側面も持っています。

最新の物価データは、見かけの数字以上にインフレ圧力が根強いことを示しており、消費者は「賢い買い物」で家計を守る行動を強めています。この変化は小売業に深刻な試練を与えていますが、同時に、AI技術などを活用したPB戦略の進化という革新も促しています。

今後の日本経済は、新政権が市場の期待と国民生活の安定という二つの課題をどう両立させるか、そして企業と消費者がこのインフレの波をどう乗り越えていくかにかかっています。

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