スリーコインズが稼ぎ頭に パルGHD、第3四半期純利益56%増の実態

パルグループホールディングス(証券コード:2726、以下「パルGHD」)の業績が加速している。2026年2月期の第3四半期累計(2025年3〜11月)において、親会社株主に帰属する四半期純利益は140億円(前年同期比56.2%増)を記録した。営業利益・経常利益も2ケタ増益が続き、売上高は1,763億円(前年同期比15.6%増)と過去最高ペースで推移している。

この躍進を支えているのが、雑貨チェーン「3COINS(スリーコインズ)」だ。


3COINSとは何か

3COINSは「300円均一」を看板に掲げる生活雑貨店である。コップ、アクセサリー、収納グッズ、キッチン用品など生活に身近な商品を手頃な価格で揃え、若い女性を中心に支持を拡大してきた。パルにとって3COINSは今や売上の約4割を占める屋台骨となり、「衣」から「住」への事業転換を象徴する存在になっている。

もともとパルGHDはアパレル(洋服)専門企業として出発した。それが今や雑貨で稼ぐ構造に変わりつつある。


なぜ利益が急増したか:「300円超」商品の導入

3COINSの急拡大を読み解くカギは、「300円均一」からの脱却にある。

3COINS事業における300円超の商品の売上総利益率拡大を主な要因として、上期の営業利益は前年同期比119.4%と期初想定を大幅に上回る伸びとなった。

具体的に言えば、300円では仕入れコストが見合わない高品質な商品を500円・1,000円・3,000円といった価格帯で投入し始めた。たとえばステンレス製のタンブラーや機能性のキッチン家電、デザイン性の高いインテリア雑貨がそれにあたる。客は「3COINSだから安い」という期待感を持ちながら来店し、500円や1,000円の商品を「お値打ち」と感じて買っていく。均一価格の安心感を保ちながら、粗利率(売上に占める利益の割合)の高い商品を混ぜ込む戦略である。


「4週間MD」と在庫廃棄ゼロへの挑戦

利益改善のもう一つの柱は、徹底した在庫管理である。

パルGHDは「4週間MD(マーチャンダイジング)」と呼ぶ独自の手法を採用している。1カ月サイクルで商品を入れ替え、売れ残りを出さない仕組みだ。在庫効率を優先し多少の欠品は容認する。ECで商品の予約販売を受け付け、予約状況を基に発注数量を積み増すなど発注精度に磨きをかけている。

かつてアパレル業界では「売れ残りは仕方ない」というのが常識だった。しかしパルGHDは以前は1割を目安としていた最終廃棄する売れ残り商品の比率を5%未満に減らした。 廃棄が減ればその分がそのまま利益になる。この手法を3COINSにも展開している。

SNSと社員インフルエンサー

3COINSが若者に広まった背景には、独特のマーケティング戦略もある。成長を牽引したのが、AIを駆使したECサイト・アプリのパーソナライズ化や、総フォロワー数が2,200万人にのぼる社内インフルエンサー制度だ。

店員が自分のInstagramアカウントで「今週のおすすめ商品」を紹介する。フォロワーはその投稿を見て来店または注文する。広告代理店に高額な費用を払わず、自社の「人」を活用して口コミを生み出す仕組みだ。商品への予約が入れば発注数量の目安も立つ。在庫管理にも直結している。


海外展開と通期見通し

国内では出店攻勢も続く。3COINSは国内18店舗に出店し、海外への再挑戦として7月に香港、8月にマレーシアにそれぞれ1号店をオープンした。 海外は慎重に進める方針だが、アジアの消費者への訴求力も試されている段階だ。

通期(2026年2月期)の業績予想については、売上高2,310億円(前期比11.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益168.5億円(同42.2%増)と増収増益を見込んでいる。

M&A(企業買収)による新ブランドの寄与も利益を押し上げた。前期に買収したアパレルブランド「ノーリーズ」が売上と利益に貢献し始めている。


注目のケーススタディ

パルGHDの今期急増益は、①300円超の高粗利商品の投入、②4週間サイクルの在庫管理徹底、③SNS社員インフルエンサーによる低コストプロモーション、④M&Aによる新ブランド寄与——この4つが同時に機能した結果である。「安さ」を武器に始まった3COINSが、いつの間にか「値頃感と付加価値の両立」を武器に変貌している。アパレル不況と言われる環境下で、パルGHDの経営モデルは小売業界が注目するケーススタディとなっている。

info@retail-spy.com
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