
紳士服大手のAOKIホールディングス(HD)は、2025年3月期連結決算において4期連続の増収増益を達成した。売上高は前期比2.6%増の1926億円、営業利益は同12.9%増の156億円であり、厳しい市場環境の中でも成長を続けている。主力のファッション事業、特にスーツ販売が苦戦する中、AOKIが好調な業績を維持できた鍵は、長年培ってきた多角化戦略にある。
収益の柱を複数持つ強み
AOKI HDの事業ポートフォリオは、祖業であるファッション事業に加え、エンターテイメント事業、アニヴェルセル・ブライダル事業、そして不動産賃貸事業と多岐にわたる。今回の決算では、この多角的な収益構造が効果を発揮した。
- ファッション事業: スーツの販売着数は減少したものの、カジュアル衣料やレディース商品の好調、高付加価値商品の販売強化により増収増益を確保した。
- エンターテイメント事業: 複合カフェ「快活CLUB」を中心に、鍵付き個室の需要増や飲食メニューの強化が奏功し、過去最高益を更新した。
- アニヴェルセル・ブライダル事業: 旗艦店の通年稼働や施行組数・単価の上昇により、大幅な増益を達成した。
- 不動産賃貸事業: 安定的な収益源として貢献している。
各事業がそれぞれの市場環境に対応し、成長を続けることで、一部事業の落ち込みをカバーし、企業全体の成長を支える構図となっている。

ファッション事業:変化への対応と新たな価値提案
ファッション事業は、働き方の多様化やカジュアル化の流れを受け、スーツ需要の構造的な変化に直面している。AOKI HDは、この変化に対応するため、「パジャマスーツ」のような機能性とデザイン性を兼ね備えたカジュアル商品の開発や、レディースブランド「MeWORK」の強化を進めている。また、オーダースーツの展開や割引抑制による適正価格販売も利益率改善に貢献している。
エンターテイメント・ブライダル事業:成長を牽引する両輪
エンターテイメント事業では、「快活CLUB」が個人のプライベート空間ニーズやテレワーク需要を捉え、成長エンジンとしての役割を担っている。積極的な新規出店も計画されており、今後のさらなる貢献が期待される。
アニヴェルセル・ブライダル事業は、コロナ禍からの回復が鮮明である。高付加価値なサービス提供に加え、企業イベントなど非ウェディング分野の開拓も進めており、収益機会の拡大を図っている。
多角化戦略の深化で持続的成長へ
AOKI HDの2025年3月期決算は、スーツ事業という逆風を、他の事業セグメントの成長で補い、企業全体の成長に繋げた好例と言えるであろう。これは、同社が長年にわたり推進してきた多角化戦略の成果である。
今後も、各事業の特性を活かし、市場の変化に柔軟に対応することで、持続的な成長を目指していくものと見られる。特に、ファッション事業における新たな価値提案と、成長著しいエンターテイメント事業、そして回復軌道にあるブライダル事業のさらなる進化が注目される。

2025年3月期 セグメント別業績
セグメント | 売上高(億円) | 前期比(%) | 営業利益(億円) | 前期比(%) |
ファッション事業 | 1,026 | +2.6 | 86 | +7.5 |
エンターテイメント事業 | 760 | +0.7 | 59 | +9.8 |
アニヴェルセル・ブライダル事業 | 117 | +14.2 | 5.4 | +837.9 |
不動産賃貸事業 | 68 | +13.6 | 15 | +20.9 |
連結合計 | 1,926 | +2.6 | 156 | +12.9 |
