ゼンショーホールディングス2025年3月期決算短信 – 決算ポイント解説

ゼンショーホールディングス2025年3月期決算短信 – 決算ポイント解説

1. 連結経営成績の概況

2025年3月期(2024年4月~2025年3月)の連結業績は大幅増収増益となりました。

  • 売上高: 1兆1,366億84百万円 (前年同期比17.7%増)
  • 営業利益: 751億28百万円 (同39.9%増)
  • 経常利益: 718億90百万円 (同41.2%増)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益: 392億90百万円 (同28.0%増)

主な増収要因は、人流回復による経済活動の正常化や雇用・所得環境の改善に伴う個人消費の持ち直しが見られたことで、特に外食関連事業を中心にご家族やグループでの利用増加が寄与しました。

既存店売上高前年比は「グローバルすき家」109.8%、「グローバルはま寿司」117.1%、「グローバルファストフード」108.8%、「レストラン」111.7%、「小売」98.2%となっています。

2. セグメント別業績

各セグメントの売上高・営業利益は以下の通りです(単位:百万円):

セグメント売上高前年比営業利益前年比
グローバルすき家295,757+11.5%24,508+32.4%
グローバルはま寿司248,495+26.1%21,352+87.0%
グローバルファストフード314,125+28.9%29,150+108.7%
レストラン156,085+10.9%11,393+53.6%
小売76,032-3.1%-1,794(損失拡大)
本社・サポート4,887+9.7%-7,418(損失化)
その他41,300+14.8%-2,002(損失拡大)

特に「グローバルファストフード」と「グローバルはま寿司」の業績が大幅に伸長し、営業利益はそれぞれ2.1倍と1.9倍になっています。一方、小売セグメントは唯一の減収となり、営業損失が拡大しました。

3. 店舗展開状況

当連結会計年度末の店舗数は、880店舗の出店、570店舗の退店を行った結果、15,419店舗(FC8,559店舗含む)となりました。

セグメント別の期末店舗数:

  • グローバルすき家: 2,621店舗(国内1,969店、海外652店)
  • グローバルはま寿司: 735店舗(国内639店、海外96店)
  • グローバルファストフード: 10,732店舗(国内960店、海外9,772店、うちFC8,482店)
  • レストラン: 1,186店舗(国内1,185店、海外1店、うちFC77店)
  • 小売: 126店舗

4. 財政状態とキャッシュフローの状況

財政状態

  • 総資産: 8,131億9百万円(前期末比650億52百万円増)
  • 負債: 5,727億37百万円(同393億33百万円増)
  • 純資産: 2,403億71百万円(同257億19百万円増)
  • 自己資本比率: 29.5%(前期末比0.8ポイント増)

キャッシュフロー

  • 営業活動によるキャッシュフロー: 789億53百万円の収入
  • 投資活動によるキャッシュフロー: 664億97百万円の支出(主に新規出店・改装投資)
  • 財務活動によるキャッシュフロー: 162億25百万円の支出
  • 期末現金及び現金同等物残高: 796億95百万円(前期末比24億76百万円減)

5. 異物混入問題と対策

2025年1月以降、国内すき家の一部店舗において商品への異物混入事案が発生したことを受け、同年3月31日から4日間、一部店舗を除く全店の営業を一時休止し、徹底的な清掃等の対策を実施しました。

再発防止策として:

  1. 創業以来継続してきた24時間営業を取りやめ
  2. 集中的な清掃作業の時間を確保
  3. 老朽化が進んでいる店舗の計画的な改装の実施
  4. その他の業態でも店舗衛生環境の維持向上への取り組み

6. 2026年3月期の業績予想と中期経営計画

2026年3月期業績予想(連結)

  • 売上高: 1兆2,235億円 (前期比7.6%増)
  • 営業利益: 820億円 (同9.1%増)
  • 経常利益: 774億円 (同7.7%増)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益: 425億円 (同8.2%増)

2026-2028年3月期の中期経営計画(単位:億円)

項目2026年3月期2027年3月期2028年3月期
売上高12,23513,50014,810
営業利益8201,0001,165
経常利益7749361,097
当期純利益425530629

売上高は2027年3月期に1.35兆円、2028年3月期には1.48兆円まで拡大する見通しです。営業利益は2028年3月期には1,165億円まで成長し、営業利益率も7.9%まで上昇する計画を示しています。

7. 配当について

2025年3月期の年間配当金は1株当たり70円(第2四半期末35円、期末35円)で、前期の50円から大幅に増配しています。配当性向は29.1%となっています。

また、A種優先株式の年間配当金は5,400,000円(第2四半期末2,707,397.26円、期末2,692,602.74円)となっています。

8. 今後の見通しと経営方針

今後の経営環境については、「引き続き原材料・エネルギー価格・物流コストの上昇など、厳しい経営環境が続くことが予想される」としています。

その中で、当社グループは「食の安全を第一優先とした『食のインフラ』」の提供に向けて、食材調達から製造、物流、店舗販売まで一貫して設計・運営を行うマス・マーチャンダイジング・システム(MMD)をより強化し、事業拡大を目指す方針です。

総括

2025年3月期は人流回復などを背景に売上高・営業利益・経常利益・当期純利益のすべてにおいて大幅増収増益を達成しました。特にグローバルファストフードやグローバルはま寿司の業績が好調です。一方で、すき家での異物混入問題への対応として24時間営業見直しなどの対策を実施し、食の安全性強化に取り組んでいます。中期経営計画では2028年3月期に向けて売上高1.48兆円、営業利益率7.9%を目指す方針を示しており、原材料高騰などの厳しい環境下でも持続的な成長を続ける計画を立てています。